東京高等裁判所 昭和35年(ラ)205号 決定
ところで抵当権の実行による建物の競売にあつては、競落人に対抗できる賃借人を除いて抵当建物の所有者等は、競落人の競落代金支払後はその建物から退去しなければならず、その場合競落人は右建物の所有者に対して訴によつて明渡を求める必要はなく競売法第三十二条、民事訴訟法第六百八十七条によつて競売裁判所に引渡命令を求め得るものとされている。これは競落人のため所有者としての占有を簡易迅速な手続によつて得せしめんとする法意に出でたものであるが、ただこの場合当該競売不動産の所有者以外の第三者に対しても右引渡命令を発し得るか否かは場合により諸説が分れ判例も亦区々に出でている。当裁判所の見るところによれば、債務者たる所有者又はその一般承継人に対して右引渡命令を発し得ることは固より言うを俟たないが、それだけに止らないで、(建物について競売開始決定がなされ、その旨の登記手続を経て差押の効力が生じた後、競売手続の進行中に右建物の占有を初めた第三者は競落人に対抗し得る権原に基いて占有を始めた者でないから、かような)第三者に対してもまた所有者の占有を承継したものとして所有者と同様に、引渡命令を求め得るものと解するを相当と思料する(当庁昭和三十三年(ラ)第三八四号昭和三十三年十一月四日第八民事部決定、大阪高等裁判所昭和三十二年(ラ)第三一一号昭和三十四年六月三日決定参照)。原審がこれと異る見解のもとに抗告人の本件引渡命令を排斥したのは不当であるからこれを取消すべきものとする。
(梶村 岡崎 堀田)